芸人の明石家さんまさんが、以前『安定になろうと思ってるだけで、もう不安定やから』と、ラジオ番組で発言された内容の記事を読んで、なるほどなと思ったものでした。
それは、多くの就活生から発せられる言葉の中に、『安定した職場で働きたい』というものがあります。その言葉を聞く度に、その安易な考え方は危険だと伝えるようにしていますが、安定を求めることの、なにが危険なのかについて、今回は少し書いてみたいと思います。
安定は今この瞬間だけのもの
2015年、世間ではアベノミクス効果もあって株価は18年振りに2万円を超え、中小企業や一部サービス業では正社員だけでなく、アルバイトの採用にも苦戦して給与や時給が上昇しているなど、景気が回復基調にある報道も多く見られたのですが、その陰で、東芝は粉飾決算からの7,000名を超える社員の削減、就職人気ランキングにも入っている損保ジャパン日本興亜も200名の人員削減、売上が低迷しているマクドナルドについても100店舗超の閉店と本社社員100名を削減、これ以外にも、ソニーモバイル、日本たばこ産業ことJT、アパレル業界のワールドなど人員削減、いわゆるリストラをしている企業は枚挙に暇がありません。
また2015年の出来事ではありませんが、三重県亀山市にあるシャープ亀山工場は、一時『液晶テレビAQUOSは世界の亀山モデル』のキャッチコピーと、吉永小百合さんのCMで有名になりましたが、わずか6年で操業停止となり、地元の自治体や商店街は大きな打撃を受けました。
これらの情報を見て、自分は公務員志望なので民間の人員削減は関係ないという人もいますが、北海道の夕張市や、福岡県福智町(旧赤池町)の様に財政再建団体に転落するような例もあり、どちらの地域でも人員は削減されています。
この両地域は旧産炭地です。各地の炭鉱が隆盛を極めていたころに、将来石炭の需要は減少し、そのために、この町は財政再建団体になりますよと言ったところで、頭がおかしいと思われて終わりです。公務員はあくまでも民間企業と比較すれば安定はしている、というだけで絶対ではありません。
安定を求め就職活動をし、その結果、意中の企業に入社することが出来たとしても、その安定が一生続くものなのかは誰にも分からないということです。数千人規模で人員削減が行われている企業の中で働いている方たちの中にもきっと、入社した時に、これで一生安泰だと信じた人は多くいるはずです。
結論としては、あくまで大手企業や公務員が安定しているのは、過去といま現在だけの話であり、未来については全く判らないということです。そして、安易に安定を求めることは、自分の選択肢や可能性の幅を狭める結果となり、逆に不安定をもたらすことにもなりかねないということを、就活生には知っておいてほしいと思います。