後継者不足の廃業は経営者の責任放棄

2015年に休業や廃業をした企業の数が、27,000件になったとの報道を目にしました。このなかで、後継者問題のために廃業に至った企業も多く含まれているようです。今日は、そのあたりを書いてみたいと思います。

f874223c1f88399089780e44f4223798_m

後継者は経営者の責任

この報道の中で取り上げられていたのは、名古屋市にあるチョーク作りを行っている企業の話です。スタンフォード大学教授の中にも、熱心なファンがいるほど、書きやすさに拘ったチョークを、経営者自ら試行錯誤の末に作り上げたにも関わらず、経営者が70歳目前に病気をしたことで、後継者問題が浮上し、社員に退職金を支払えるうちに、ということで80年を超える会社の歴史に幕を下ろされた様です。

この経営者の方は、70歳前に病気をするまで後継者問題を真剣に考えてこなかったそうです。

確かに、国内にある大半の中小零細企業では、社長自らが現場で実際に作業をして、営業をして、経理もして人事も行うという姿を目にします。確かに、後継者問題は多くの中小企業にとって、差し迫った目の前の問題とは思えないのかもしれません。しかし、このチョークメーカーの事例では、結果としてこの企業で勤務していた社員12名のうち再就職をできたのは2名のみという結果を招いています。

企業は一度、生まれたら人間と違って死ぬことは予定されていません。このことは、企業が無期限に事業を継続していくことを前提とする考え方として、継続企業の前提(Going concern:ゴーイング・コンサーン)といわれます。上場企業では、事業継続に重大なリスクがあると監査人に指摘された場合は、リスク対策を決算書に明記しなければなりません。

チョークメーカー経営者の方には申し訳ないのですが、技術者としては優れていたのかもしれませんが、経営者としてどうだったのか、と言われると疑問符が残ります。

では、どうするべきなのか。それは、経営者の最も大切な仕事の一つに後継者を育てるということがあります。ソフトバンクの孫正義氏は、50代後半ですが既に後継者候補として、Googleからニケシュ・アローラ氏を迎え入れています。

後継者を育て上げるのは、一朝一夕に出来ることではありません。中小企業の経営者からは、当社には大企業と違って後継者となる優秀な人材がいません、と言われることがあります。人不足に悩むことが多い中小企業だからこその本音なのでしょうが、経営者が引退する時に廃業させるのでしょうか。企業には、雇用を守り、社会に貢献し、永続的に続いていく義務があります。

経営者の方々には、ぜひ将来を見据えて、高品質で熱心なファンもいたのに廃業せざるをえなかったチョークメーカーの事例を反面教師として、後継者を育てて下さい。

 

※具体的に何から手を付ければいいのか、疑問がある経営者の方は、ぜひお問い合わせページよりご質問ください。

安定は不安定

芸人の明石家さんまさんが、以前『安定になろうと思ってるだけで、もう不安定やから』と、ラジオ番組で発言された内容の記事を読んで、なるほどなと思ったものでした。

それは、多くの就活生から発せられる言葉の中に、『安定した職場で働きたい』というものがあります。その言葉を聞く度に、その安易な考え方は危険だと伝えるようにしていますが、安定を求めることの、なにが危険なのかについて、今回は少し書いてみたいと思います。

 

333c9197da4a32190034cd1481349202_m

安定は今この瞬間だけのもの

2015年、世間ではアベノミクス効果もあって株価は18年振りに2万円を超え、中小企業や一部サービス業では正社員だけでなく、アルバイトの採用にも苦戦して給与や時給が上昇しているなど、景気が回復基調にある報道も多く見られたのですが、その陰で、東芝は粉飾決算からの7,000名を超える社員の削減、就職人気ランキングにも入っている損保ジャパン日本興亜も200名の人員削減、売上が低迷しているマクドナルドについても100店舗超の閉店と本社社員100名を削減、これ以外にも、ソニーモバイル、日本たばこ産業ことJT、アパレル業界のワールドなど人員削減、いわゆるリストラをしている企業は枚挙に暇がありません。

また2015年の出来事ではありませんが、三重県亀山市にあるシャープ亀山工場は、一時『液晶テレビAQUOSは世界の亀山モデル』のキャッチコピーと、吉永小百合さんのCMで有名になりましたが、わずか6年で操業停止となり、地元の自治体や商店街は大きな打撃を受けました。

これらの情報を見て、自分は公務員志望なので民間の人員削減は関係ないという人もいますが、北海道の夕張市や、福岡県福智町(旧赤池町)の様に財政再建団体に転落するような例もあり、どちらの地域でも人員は削減されています。

この両地域は旧産炭地です。各地の炭鉱が隆盛を極めていたころに、将来石炭の需要は減少し、そのために、この町は財政再建団体になりますよと言ったところで、頭がおかしいと思われて終わりです。公務員はあくまでも民間企業と比較すれば安定はしている、というだけで絶対ではありません。

安定を求め就職活動をし、その結果、意中の企業に入社することが出来たとしても、その安定が一生続くものなのかは誰にも分からないということです。数千人規模で人員削減が行われている企業の中で働いている方たちの中にもきっと、入社した時に、これで一生安泰だと信じた人は多くいるはずです。

結論としては、あくまで大手企業や公務員が安定しているのは、過去といま現在だけの話であり、未来については全く判らないということです。そして、安易に安定を求めることは、自分の選択肢や可能性の幅を狭める結果となり、逆に不安定をもたらすことにもなりかねないということを、就活生には知っておいてほしいと思います。

仕事に行き詰まった時に観たい映画 『ザ・シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

こんにちは、とある人事のコミュニケーターです。

今日は、仕事で躓いて自分が嫌になったり、社内外の人間関係に行き詰まって仕事を辞めたくなったり、転職を悩んでみたり、就活に苦戦したり、そんな苦悩した時に、ぜひ観てほしい映画をご紹介します。

その名は、『ザ・シェフ 三ツ星フードトラック始めました』です。

 

chef

日本公開は2015年、監督はアイアンマン一作目、二作目を監督したジョン・ファヴロー、この作品では主演もしています。脇を固めるのは、アイアンマン主演のロバートダウニーJr、ソフィア・ベルガラ、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン、ジョン・レグイザモと豪華な俳優陣です。

ストーリーや物語の詳細について気になった人は、専門外の私が説明するよりも、映画に詳しい多くの方々が、ブログなどに書いてありますのでぜひ検索してみて下さい。ただ情報を仕入れるよりも前に個人的には、素の状態でまずは観て、そして感じて欲しい映画です。

私も、さまざまな視点から観ることで、その都度、新たな発見が出来る作品なので、映画も二度観て、その上でDVDソフトやGoogleプレイなど複数のメディア媒体を使って、観なおしています。

今回は、そのうちの一つの視点を基に書いてみます。

◆ 悩んだ時こそシンプルに考える

この映画の主役シェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)が、自分が作りたい料理と、レストランオーナー(ダスティン・ホフマン)が求めている料理のギャップに悩むときに試作するのは、複数の隠し味やスパイスをふんだんに使った重層的味わいの料理です。

そして、坂道を転がるように落ちていった先に悩んで出した答えは、キューバサンドという、バンズの中にハムやチーズにピクルスを挟んだだけのシンプルなサンドイッチです。画面を通じて、カールが持てる技術の全てを出して意気込んで作った料理の数々よりも、良い意味で力が抜けたシンプルなキューバサンドの方が、個人的には何倍も美味しそうに見えるので不思議です。

カールは、まわりの人のアドバイスもあり、自分の問題に対してシンプルな本質に至ったことで、新たな未来が開けてきます。その再起を図るのが、自分自身の料理人としての出発点にあったというのは示唆に富む内容です。

自分も含め、仕事に関することで悩んでいるときは、主役カールのように、問題の本質に気付くことなく、本質を取り巻く雑多なこと(例えば、収入や生活をどうするのか、社会的地位を失うのが恐い、人間関係をダメにしてしまうなど)に気を取られてしまいがちです。

そのような時には、自分が仕事をしていく上で、大切にしたいことは何なのか。そのことを、自分自身に何度も問いかけながら、少しづつ自分自身が持つ仕事をする本質に近づいていくといいでしょう。そして自分の本質にさえ気づくことが出来れば、仕事に対して、シンプルに物事を考えることができるようになるはずです。

他にも、この作品から私は様々に気付きを得ることが出来ました。ただ、そのような視点からわざわざ観なくても、単純に落ち込んだ時には元気を与えてくれる作品ですので、仕事に悩んだ時にはぜひ観てみるとよいでしょう。