「報告・連絡・相談」のコツは上司から働きかけること

前回に引き続き、「報告・連絡・相談」のお悩みについてです。

部下からの報・連・相に不満がある。
例えば、必要な報告をあげない、マズい情報はギリギリまで相談がない、具体例をあげるとそれだけで小一時間は話が終わらないほどの事例を、さまざまな会社で管理職の方から聞かされます。

また、部下には口酸っぱく「報・連・相」が大事であると指導するにも拘らず、改善される気配がない。そんな状況がより一層、上司のストレスを溜める原因にもなってます。

ここで大事なことは、「報・連・相」それ自体が目的ではありません。
あくまでも、仕事を円滑に進めるため、仕事の進捗や方向性の確認するためなど、何かを判断する必要に迫られた時、手元に必要な情報が、必要な量と質で揃っている状態にしておくことが本来の目的です。

そんな、上司である管理職にとって仕事しやすい環境を作るためのヒントを、書いてみたいと思います。

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 上司が原因を作り出している?

なぜ、うちの会社の部下は「報・連・相」ができないのでしょうか?と相談を受ける際に、逆に当事者である部下の方にも、上司に報告・連絡・相談をする際のやり取りについて詳しく教えてもらうようにしています。

その際によく聞く話は、上司に報・連・相をすると、「自分で考えろ!」「いちいち聞くな!」「まだそんなことも分からないのか!」と部下が望んでいたことと、全く関係のない回答を返されるというものです。

部下が聞きたかったことは、そんな言葉ではなく、上司としての経験や知識を基にしたアドバイスなり指示です。 自分で解決できることであれば、わざわざ相談したりしません。

こんなことが数回続くと、部下は心の中で上司を「使えないヤツ!」として反発するか、「叱られると嫌だ」と萎縮するか、どちらにしても「報・連・相」は本来の趣旨から離れ、どんどんと悪循環に嵌ってしまいます。

大事なことは「報・連・相」が出来る環境を作ってあげること

上司からすれば、部下が自分で考えることもせずに安易に相談して済まそうとしている、何度も教えているのに同じようなことを質問してくるなど、いろいろ言いたいこともあるでしょう、また多忙な時間に、上司からするとレベルの低い報告などを受けると、ついつい語気が荒くなってしまう気持ちも分からないではありません。

ただ目的は「自分の手元に必要な情報が、必要な量と質で揃っている状態にしておく」ことで、「報・連・相」そのものではないはずですし、部下との人間関係を悪化させることでも、無論ないはずです。

具体的な改善策としては、上司が「報・連・相」の時間を定期的にスケジューリングした上で、部下が報告・連絡・相談ができる場を作ってあげることです。

このよい点は、上司としては報連相の時間を予め作ることで、忙しい時間に邪魔されることが基本なくなり、自らの時間を有効活用しやすくなります。 また時間があることで、部下の報連相から問題点を把握し、教育をする時間として活かすことも可能です。

部下としては、時間が決まっていることで、報告すべき事柄をまとめる準備や心構えができ、さまざまな相談をする機会にもできます。

そして、通常業務中に入る報連相は優先順位が高い案件であることが多いので、上司としては判断がしやすくなるというメリットもあります。

但し、ここで大切なことは、報連相の時間は仕組み化して、定期的に繰り返していくことで好循環を生み出すものであり、不定期に開催しても効果が薄くなります。

部下の「報告・連絡・相談」にお悩みの管理職の方はヒントにしてみられてはいかがですか。

報告・連絡・相談についての定義を共有する

「報告・連絡・相談」、いわゆる「報・連・相」が、仕事を進める上で大切であるということは、各企業の社内では口すっぱく言い続けられていることでしょうが、多くの管理職が、部下の「報・連・相」が出来ていないと嘆いてあります。

そもそも話を聞いていると「報告・連絡・相談は速やかにしなさい」と社員に教育はしているものの、その定義が各人で明確になっておらず、上司の使っている意味と、部下の認識の間にズレがあるという状況を時々目にします。

部下の「報・連・相」がダメだと嘆く前に、まずは定義を社員同士が共有しておかなければ、報・連・相の改善どころではありません。 今回の記事では、言葉の定義を再度、理解し直す機会にしたいと思います。

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報告・連絡・相談の定義

報告
上司からの業務上の指示・命令に対し、部下から途中経過・結果を知らせることです。
(例)
上司:この資料を明日の午前10時までに仕上げてくれ。
部下:分かりました。
〜2時間後〜
部下:資料の作成ですが、データの精査に時間が必要ですので、明日の12時までお時間頂戴できますか?
上司:では、余裕を持って14時までに仕上げてくれ。
部下:分かりました。

連絡
上司や部下など職位には関わらず、自分の意見を入れることなく、客観的な事実を情報として関係各人に知らせることです。
(例)
上司:新製品の開発会議は、金曜日の10時から行うので各人、準備をしておくように。
(例)
窓口:◯◯様より、列車遅延のために到着が30分遅れるとの電話がありました。

相談
仕事上で判断に迷う時や意見を聞いて欲しい時に、先輩・上司・同僚などに意見を聞きアドバイスを受けまることです。相談も職位に関係なく行われます。
(例)
後輩:この仕様ですが、前回の場合にはどのように対応されましたか?
先輩:前回は、この様な仕様にしたのうまくいったよ。
(例)
上司:君の担当先A社について、納期が遅れがちになる原因はこれだと思うのだが、君の担当者としての意見を聞きたい。
部下:それも原因のひとつですが、新しい設備の稼働がスムーズにいっていない事も原因に挙げられると思います。

用語の持つ意味を共通認識しておくことが大切である

今回は、報告・連絡・相談について見なおしましたが、本当に大切なことは社内で使用する様々な用語が持つ意味を、すべての社員が共通認識として持っておくことが大切です。認識が共有できていないと、コミュニケーションの中に齟齬をきたします。 極端なことを言えば、お互いが違う言語で話をしているにも関わらず、理解を深めようとするようなものです。

報・連・相は大事なことではありますが、まずはお互いの認識にズレが生じていないかをいま一度、確認してみる機会になればと思います。

社員のやる気を上手に引き出すハーズバーグの理論

中小企業に伺うと、よく受ける相談のひとつに、『社員のやる気がない、給与が低いからなのか?』というものがあります。 その際には、社員のやる気を引き出すための考え方は、人はパンのみに生きるにあらず(聖書の本来の意味ではありません)ですよ、とお答えしています。

確かに社員が働くひとつの大事な要素である給与等の雇用条件は、もちろん大事です。 しかし、社員をやる気にさせるのは、給与等の雇用条件だけでしょうか。 この『人はパンのみに生きるにあらず』ということについて、ハーズバーグの『動機づけ-衛生理論』を用いて、やる気を出す取り組みについて書いてみます。

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 資本力のない中小企業だからこそ、社員のやる気が重要

ハーズバーグの『動機づけ-衛生理論』については、『農薬混入事件から学ぶ:給与と不満』にも書きましたが、給与は不満の種であり、どれほど昇給させても種そのものは消えてなくなる訳ではありません。給与に対する不満が大きくなったり、小さくなったり変化するだけです。

人・モノ・金の揃った大手企業であれば、給与や福利厚生を充実させ不満の種を小さくすると同時に、多額の給与によって会社に縛りつける荒業も可能ですが、多くの中小企業では限られた人・モノ・金の中でそうもいきません。
ただ、社員ひとりひとりの仕事への取組み方次第で、結果を大きく変えることができる中小企業だからこそ、社員のやる気をどのように引き出していくのかに、目を向けるべきであると考えます。

社員をやる気にさせるプロセスとは

そのような社員のやる気を引き出すことができる物事を、ハーズバーグの理論では、『動機づけ』と呼びます。 動機づけには、仕事を達成すること・仕事を承認されること・仕事そのもの・責任・昇進・社員自身が成長を感じる、等があります。

例えるなら、社員自身が仕事そのものに興味を持てる教育を行い、その仕事にゴールを設け、本人に任せることで責任を持たせ、ゴールを達成できたら、まず承認し、達成を繰り返すことで成長を本人に自覚させ、その繰り返しが昇進に繋がっていく。その様な会社内のプロセスを作っていくことです。

これらのことは、給与改定や福利厚生を充実させることと比較して、金銭的な経費は非常に少なくて済みます。 どのようにプロセスを組み立て、実行していくのかを考え、社内で行動を開始すればよいだけです。 また万が一、失敗してもは損失は非常に少なくてすみます。

これら動機づけは、社員の仕事に対する満足感に大きく寄与します。 給与や福利厚生などが他社より劣っているとしても、それ以上に仕事に対する満足感があれば、人は仕事に対して、やる気を持つことができます。 けっして給与が恵まれている訳ではない、NPO法人や社会的企業で、多くの方が頑張ってある事からも理解できるのではないでしょうか。

敬意を持って社員に接する

結論として、人はどんなに単調な仕事でも、自分の仕事に意味があり、周りから適切に評価されていると感じることができれば、やる気を持って仕事に取り組むことが出来ます。 やる気を引き出すプロセスを構築するということは、会社はあなた達社員に対して、敬意を持って接しています。という意思表示でもあります。
逆に、高い給与さえ払えばいいという姿勢は社員に対して、あなたは金銭で動く人間ですという間違ったアピールにもなりかねません。 社員に対し意図しない発信をしてしまい社員のやる気を削ぐことがないように、まずは簡単なことから、社員のやる気を少しづつでも引き出すことを、会社や経営者層はやってほしいと思います。