就職活動の面接で自己PRをする際に、非常に盛りすぎたPRや明らかに嘘っぽいPRを目にすることがあります。
PRをしている就活生としては、上手にできているつもりなのかもしれませんが、面接をしている立場からすれば、意外と簡単に嘘や話の盛り過ぎには気づくものなのです。 その理由は単純にリアリティ(真実性・迫真性)をPRから感じられないからです。私は行動力があります。私は忍耐力があります。私はリーダーシップがあります…
PRは単純に素晴らしいことを言えばいいというものではありません。いかに聞き手が納得できる様な説得力を持った話ができるのかという点が大切なのです。説得力を持った自己PRをするためには何が必要なのでしょうか。
本日は、そのことについて書いてみたいと思います。
◆ マニュアルだけでは、リアリティが伝わらない
ナレッジ・マネジメントの第一人者である、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏の言葉に「ビジネスの現場はすべて個別一回性の事象であり、経営は決して理論通り、戦略通り、思惑通りには進まない」というものがあります。
この言葉と、面接の自己PRの間には何の関係もなさそうに思えますが、僕は自己PRについても、(それ以外のことについてもですが…)参考にすることが出来る、本質をついた言葉であると思っています。
この言葉を捉え直してみると分かりやすいのですが、自己PRについても、決して理論や戦略つまりマニュアル通りにいくものではなく、個別一回性の事象、すなわち現実に一人ひとりが経験した中にこそPRできるリアリティはある、と読み替えることが出来るのです。
面接の自己PRについては、多くのマニュアルでは、まず自分の強みを短い言葉で端的に言い表し、それからその説明を具体的にしなさいと書かれてますが、そのマニュアルをむやみに信じるのではなく、自分自身が具体的に経験した事象を元にして、自分の言葉で自己PRを作るべきなのです。大事なことは、話しをする順番ではなく内容そのものです。
このことを、さらに全く関係のなさそうな、ある映画を例に説明してみます。
著名な映画監督であるクエンティン・タランティーノ作品に『レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)』という映画があります。
この映画の中で、捜査官であるティム・ロスが、麻薬の売人に扮して犯罪者集団に潜り込み、内部から犯罪計画を探ろうとします。ただ単に何の裏付けもなく犯罪者集団に潜り込むと、疑われる危険性があり、疑われることを避け信用を得るために、麻薬の売り買い途中でトイレに行き、そこで危うく警察に捕まりそうになる話を作り上げ、その話を何度も練習し、さも実際に起きたことであるかの様に、犯罪者集団の中で話を聞かせることで、まわりの信頼を得るシーンがあります。
これについて、嘘を上手に話して信用を勝ち取れと言いたいのではありません。野中郁次郎氏の言葉にあるように、大事なポイントは細かい事象の中にあることを理解して欲しいのです。
どれだけの就活生がいたとしても、経験については一人づつ全く違います。その自分にしかない経験の中から、PRしたいことに関係する事象を、ひとつでもふたつでもいいので切り出して、それを色付けしてあげるのです。
自分をPRすることが大切な場面で、なぜワザワザまわりと同じようなPRをしなければならないのでしょうか。あなたの武器はあなたの経験の中にしかないのです。その点を踏まえて自己PRについても考えてほしいと思います。