就活生が知っておくべき大企業信仰の注意点


求職活動をしている就活生と接していると、その多くが「大企業」「安定」を希望している姿を目にします。 正直、求人倍率が数百倍になる大手企業ばかりを受け、不採用通知に心が削られている姿を見ると、なぜそんなにしてまで大企業に入りたいと思うのか、質問したくなってしまいます。

別に、大企業の正社員を目指すことがダメだというつもりは、全くありません。
この企業で働くことが小さいことからの夢であった、自分のやりたい仕事ができる環境は、この企業にしかない。 そういった理由から志望している就活生には、ぜひ頑張って夢を叶えてほしいものです。

ただ、先が見えない社会に踏み出す不安にかられ、寄らば大樹の陰とばかりに大手企業を選んでいる人たちは、その選択で本当に間違いないのでしょうか。

「大企業の正社員」の職に就くことを目的とし、それが結果的に安定した仕事・人生を送れると短絡的に考えることは、就職活動をするうえでというよりも、自分自身のこれからの人生やキャリアを築いていく上で、落とし穴が潜んでいる場合もあります。

確かに大手企業の賃金や福利厚生は、中小企業と比較すると大きな魅力です。
しかし、この恵まれた環境が、はたして自分が定年を迎えるまで、今後40年続くのかと問われると、正直答えに窮するのではないでしょうか。
それどころか本当は10年先を予測することすらも簡単ではないのです。 だからこそ、大手企業偏重の就活については、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。

 

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「就職人気ランキングの常連企業がいまや……」

ひとつの例を挙げてみますと、1998年から2002年まで、大卒の文系・理系ともに就職人気企業ランキングのトップは、ソニーでした。

当時の就活生に、「10数年後、ソニーは業績悪化で、テレビ事業は分社化し、パソコン事業は投資ファンドに売却、そしてリストラによる人員削減を数千人単位でしてます。」とでも言おうものなら、たぶん頭がおかしいと思われたことでしょう。

当時のソニーは、テレビでは平面ブラウン管の、vega(ベガ)が大ヒットを飛ばし、パソコンではvaio(バイオ)のブランドが浸透し始めた時期です。 事実が否かは分かりませんが、スティーブ・ジョブズが、vaioにmac OSを載せる為にソニーにアプローチをしてたとの情報もある、そんな勢いのある時代です。

1990年代から2000年代中盤も、就職氷河期と呼ばれ失われた20年のまっただ中、新卒者の求職活動についても厳しかった時代です。 当時も安定を求めていた就活生は多く、ソニーに入社すれば、「大企業・正社員=安定した仕事・人生」という考えは、皆が心のどこかに持っていたことでしょう。

ただ当時であれば、頭がおかしいと思われるようなソニーが苦境に陥るという意見も、2014年現在では、紛れもない事実になってしまいました。 そして当時ソニーに入社した新卒者は、自分が30代後半から40代になった時、こんなに厳しい環境におかれることになると果たして想像できたでしょうか。 たぶんいないと思われます。

 

「人生設計が大きく狂ってしまうリスク」

ここからはソニーの例ではありませんが、僕は仕事柄、リストラによる人員削減を断行している大手企業の現場を目にすることがあります。 メディアで取り上げられるようなリストラの光景は、全体のほんの一部分です。 ニュースで数千人規模のリストラによる人員削減の話題が取り上げられますが、その数千人の陰には、配偶者があり、子どもがあり、それぞれの人生があります。

家族ができ住まいをローンで購入し、その直後を見計らったかのように遠方へ転勤の辞令、国内ならまだしも海外への辞令もあります。ローンや家族を抱えて辞めれない社員は単身赴任し、年に数回、家族が待つ家に帰る。 転勤ならまだマシで早期退職の勧奨。早期退職し割増退職金をもらったものの次の仕事が見つからない、そんな方が日本中に何千、何万人もいらっしゃいます。

このように、どれだけ大手の企業であっても、どれだけ就職人気ランキングの常連であっても、未来には、予想もしない事態が待ち受け、そのことが自分自身の人生に多大な影響をあたえる可能性はあるのです。

繰り返しになりますが、大企業を志望するなということを言いたいのではなく、どれほどの大企業であっても、自分の身を一生守ってくれる安定を無条件に与えてくれるものではない。ということを理解しておくべきです。

あくまでも「大企業・正社員 ≠ 安定した仕事・人生」であるという意識を持ち、それでも大企業を中心に就活するのか、他にも目を向けてみるのか、自分自身の人生や仕事のキャリアをどのように築いていくべきなのか、答えは自分でしか出せません。

大手企業の求人倍率が約0.5倍、300人以下の企業の求人倍率は3.2倍の社会環境下で、新卒というある意味中途採用にはない強い立場を手にしている、そんな就活生だからこそ知っておいてほしいと思うのです。

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