巷にブラック企業という言葉が定着してけっこうな時間が経ちます。
おかげさまで最近、就職活動中の学生からは「ブラック企業の見分け方を教えてほしい」「受ける企業がブラックかどうか判断してほしい」「知っているホワイト企業を教えてほしい」など、ブラック、ブラック……と、毎日のように聞かされています。
今回は、就職活動中の新卒予定者に、ブラック企業の定義を自分自身で決めることについて、労働基準法の総則を基にして書いてみますので、ひとつの参考にしてほしい思います。
労働基準法、名前だけは聞いたことがある人も多いと思うのですが、1日の労働時間は8時間が基本で、その場合には休憩は60分以上とらせること、他にも賃金の支払いについての原則など、労働者と働かせる立場である使用者が遵守すべき様々な規定が書かれてます。
「労働基準法 第一条 総則 第一項から定義を考えてみる」
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなければならない。
この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
「労働基準法 第一条 総則 第一項・第二項」
この総則にある言葉の中で、僕が大切であると考えるのは「人たるに値する生活を営むための必要を満たすもの」ここが最大のポイントで、自分の人生において、日々の生活について、それぞれの人が理想型を持っていることでしょう。
例えば、所定休日ひとつをとっても、必ず週末の土・日が休日であれば、平日はどれだけ残業をしても気にならない、そんな人もいらっしゃるでしょう、土日に仕事をすることも気にしないが一日の勤務時間が8時間しか働きたくはない、そんな人もいらっしゃることでしょう。
労働基準法では、そのような個別の事案ごとに、一つ一つを法令として書き記すことは不可能ですので、全体的な基準として昭和22年に制定されました。
ただ昭和22年に法律が制定された当時は、現代のように労働環境が多様化することは想像していなかったと思われます。24時間オープンしている店舗が当たり前にあるような社会が訪れることは、確実に想定外だったことでしょう。
そのような社会環境下で、労働時間や賃金など種々の労働条件について、これが絶対の正解であり、これは絶対の不正解である。そんなことは、他人が外野からとやかく言って白黒をつけれるものではありません。大事なことは自分自身が、仕事をする上で絶対に守りたい労働条件の定義をしっかりと考えて持っておくことです。
ただ、労働条件は労働者が一方的に決めれることでもありません。いくら自分が一日8時間しか仕事したくない、と言ったところで、使用者である会社が法的に認められる範囲の残業を指示してくれば、断ることは不可能です。
しかし、それが自分の持つ理想型であり絶対に譲歩できないと考えるのであれば、本人にとってはブラックな就業環境だと考える原因になりかねません。
そして、自らが定義を持つことの本質は、見た目の労働条件に左右されない、自分自身の仕事に対する信念を持つことです。ブラック企業に関する質問をしてくる人たちの多くは、自分がどのような環境や条件で仕事をしたいと思っているのか明確ではなく、労働条件において譲歩できることと絶対に守りたい信念が、ハッキリしていないように見受けられます。
ブラックな就業環境か否かを判断するうえで大切なことは、まわりの判断や意見に惑わされることではなく、自分自身の人生における仕事という要素を、どの様に規定して自主的に構築していくのか、そこが一番大切なことです。
そのような視点を持って、仕事選びを考えてみることも悔いのない仕事をする上で大事なことです。