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【第26回】人材採用に苦戦する中小・小規模企業が、上手に利用すべき助成金の仕組み(後編)

結婚、出産・育児がひと段落して、そろそろ仕事への復帰をしたいと女性の方が思った時に、育児休暇制度がある企業であれば、職場への復帰もスムーズですが、中小・小規模企業で勤務されていた方の多くは、結婚や出産を機に一旦は退職されたうえで、再び就職活動を開始することでしょう。

そして実際に就職活動を行ってみると、世の中の多くの中小・小規模企業が子育て世代に対して、意外に厳しいことを、あらためて実感される方も多いのではないのでしょうか。

そういった際の選択肢のひとつに、派遣会社に登録し、派遣スタッフとして派遣先で働くという方法があります。 しかし、派遣会社を通しての就業については、なんとなく不安を感じられる方や、ブランクをスムーズに埋めることが出来るか、いま一歩、自信がない方に活用しやすい、中小企業庁の人材対策事業があります。

その制度について、前回は企業からの目線で書きましたが、今回は再び仕事への復帰を考えてある女性の方の目線で書いてみたいと思います。

 

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◆ 国の予算を、あなたの仕事への復帰の為に使ってもらう

経済産業省の外局である中小企業庁が、発表している人材対策事業の中に、中小企業新戦力発掘プロジェクトというものがあります。 このプロジェクトの概要については、前回の記事を参照ください。

このプロジェクトの目的は、再就職を希望する主婦の方に中小・小規模企業での職場実習の機会を提供するということです。 但し、ここで研修が受けれるだけか…と、単純な判断をしてはいけません。 職場実習の場を提供する企業も暇つぶしにやる訳ではありません。 せっかくなら好ましい人材であれば採用もしたいと考えた上で、受け入れをするのが当たり前のことです。

ここで、この事業に応募する女性の方が、得ることが可能なメリットをいくつか挙げてみます。

1, 就職活動に苦戦をしていたとしても、コーディネート機関が企業に、あなたをPRしてくれます
コーディネート機関には、様々な人脈や企業との付き合いも多いので、表向き求人募集をしていない企業での研修を案内してくれるような場合もあります。
2, 職場実習期間中に、社員の方たちや企業の持つ雰囲気を実際に感じることが可能です。 もちろん企業側もあなたのことをしっかり見ていますので、その点はお忘れなく…。
3, ブランクがあって仕事に対する不安を感じていても、インターンシップになりますので、仕事に対するカンを取り戻すキッカケになります。 これが、今回の趣旨です。
4, 職場実習期間が修了した後、双方が合意できれば、そのまま企業での勤務も可能です。

表向きには、職場実習が目的になっていますが、先にも書いた通り、企業としても好ましい人材であれば採用をしたいとの思いを持っているはずです。 逆に、実習生として企業に入っている間に、こちらからアピールをするチャンスもあります。

自分の力だけで就職活動をするのもよいのですが、国としては、一旦は育児などで仕事を離れた女性に、再び社会で頑張って働いてもらうことを願っています。 一人の力では限界がありますが、せっかく国が大きな予算を使って、就職活動を応援してくれるのですから使わない手はありません。

ちょっと考えてみたいな…と思った方は、全国が9つのエリアに分けられて、各エリアにコーディネート機関が設けられていますので、その機関に詳しい内容を問い合わせてみるとよいでしょう。

※ 今回の事業には、実習生になるための条件が設けてあります(勤続歴など)。 詳細については、ご確認をお願いいたします。

就職活動の面接で自己PRを上手にする方法

就職活動の面接で自己PRをする際に、非常に盛りすぎたPRや明らかに嘘っぽいPRを目にすることがあります。

PRをしている就活生としては、上手にできているつもりなのかもしれませんが、面接をしている立場からすれば、意外と簡単に嘘や話の盛り過ぎには気づくものなのです。 その理由は単純にリアリティ(真実性・迫真性)をPRから感じられないからです。私は行動力があります。私は忍耐力があります。私はリーダーシップがあります…

PRは単純に素晴らしいことを言えばいいというものではありません。いかに聞き手が納得できる様な説得力を持った話ができるのかという点が大切なのです。説得力を持った自己PRをするためには何が必要なのでしょうか。

本日は、そのことについて書いてみたいと思います。

 

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◆ マニュアルだけでは、リアリティが伝わらない

ナレッジ・マネジメントの第一人者である、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏の言葉に「ビジネスの現場はすべて個別一回性の事象であり、経営は決して理論通り、戦略通り、思惑通りには進まない」というものがあります。

この言葉と、面接の自己PRの間には何の関係もなさそうに思えますが、僕は自己PRについても、(それ以外のことについてもですが…)参考にすることが出来る、本質をついた言葉であると思っています。

この言葉を捉え直してみると分かりやすいのですが、自己PRについても、決して理論や戦略つまりマニュアル通りにいくものではなく、個別一回性の事象、すなわち現実に一人ひとりが経験した中にこそPRできるリアリティはある、と読み替えることが出来るのです。

面接の自己PRについては、多くのマニュアルでは、まず自分の強みを短い言葉で端的に言い表し、それからその説明を具体的にしなさいと書かれてますが、そのマニュアルをむやみに信じるのではなく、自分自身が具体的に経験した事象を元にして、自分の言葉で自己PRを作るべきなのです。大事なことは、話しをする順番ではなく内容そのものです。

このことを、さらに全く関係のなさそうな、ある映画を例に説明してみます。
著名な映画監督であるクエンティン・タランティーノ作品に『レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs)』という映画があります。

この映画の中で、捜査官であるティム・ロスが、麻薬の売人に扮して犯罪者集団に潜り込み、内部から犯罪計画を探ろうとします。ただ単に何の裏付けもなく犯罪者集団に潜り込むと、疑われる危険性があり、疑われることを避け信用を得るために、麻薬の売り買い途中でトイレに行き、そこで危うく警察に捕まりそうになる話を作り上げ、その話を何度も練習し、さも実際に起きたことであるかの様に、犯罪者集団の中で話を聞かせることで、まわりの信頼を得るシーンがあります。

これについて、嘘を上手に話して信用を勝ち取れと言いたいのではありません。野中郁次郎氏の言葉にあるように、大事なポイントは細かい事象の中にあることを理解して欲しいのです。

どれだけの就活生がいたとしても、経験については一人づつ全く違います。その自分にしかない経験の中から、PRしたいことに関係する事象を、ひとつでもふたつでもいいので切り出して、それを色付けしてあげるのです。

自分をPRすることが大切な場面で、なぜワザワザまわりと同じようなPRをしなければならないのでしょうか。あなたの武器はあなたの経験の中にしかないのです。その点を踏まえて自己PRについても考えてほしいと思います。

就職活動の面接で面接官の心理を読む方法 【ハロー効果】

就職活動を行っていくうえで、就活生としては面接を受ける際に、面接官は客観的に人物を評価していると思いがちですが、実際には人が何かを判断する際には、多かれ少なかれその人の考え方や思想などが反映しています。このようなことを、バイアス(bias)がかかっているといいます。

そのバイアスの中で、今日は就活生の面接評価をプラスにもマイナスにも変化させる、ハロー効果について書いてみたいと思います。

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「有名大学を卒業した人は、人格も優れているのか?」

ハロー効果というのは、経験的に多くの人が理解しているかもしれませんが、ある人を判断する際に、その人の目立ちやすい特徴に意識が引きずられて、他の特徴について評価が歪んでしまうことをいいます。

例としては面接の際に、就活生が有名大学を好成績で卒業する予定であった場合、面接官がその人物の大学成績という特徴に意識が引きずられ、人格までも優れていると思い込んでしまうことがあります。 理解できると思いますが、成績が優れていることと人格が優れていることには何の関係もありません。 成績と人格が共に優れている人もいますが、成績が優れていても人格は破綻している様な人も数多く存在します。

同じような面接時の例で、大学の4年間は体育会系で頑張っていましたという就活生がいたとすると、挨拶や返事がハキハキしているのは体育会系で頑張ってきたからだ、と勝手な判断を下してしまいがちですが、就職面接の際の、就活生の挨拶や返事はハキハキしているのが当然です。
しかし、体育会系で頑張っていたという目立ちやすい特徴に意識が引きずられてしまい、評価を歪ませてしまうのです。

逆にインドア派の趣味で、あまり外出することはありません、という候補者がいると本人の性格と趣味には何の関係性もありませんが、なぜか性格は陰鬱なのではないかという間違った判断を下してしまうこともハロー効果のなせるせいなのです。

 

「面接でハロー効果を上手に利用する」

面接官が、自分自身の判断には無意識のうちに、バイアスがかかりハロー効果などの影響を受けているということを理解しておいてくれれば助かるのですが、多くの面接官自身は客観的になんの影響も受けることなく就活生を評価していると思いがちです。

このことについて就活生の側から、あなたの私に対する判断は正確ではありません。と言えればよいのでしょうが、現実的には無理な話です。 では、どのようにすればよいのでしょうか?

まず、一番簡単な方法は「見た目を変えるということです」
有名大学を出ていなくても、大学の4年間を体育会系で頑張っていなくても、 インドア系の趣味のせいで、なんとなく性格が陰鬱であるという勝手な印象を受ける人も、見た目を変えることでハロー効果をポジティブに使うことも可能なのです。

では、どのように見た目を変えればいいのでしょう。 それは面接を受ける企業が求めている新卒者の姿を、分かりやすく自分の外見で表現するのです。 例えば、企業が元気のある営業社員を採用したいと考えているのであれば、あえてステレオタイプな新卒営業社員のイメージを具現化した見た目にする、ということです。

ただ、見た目を変えるというと、就活においてそこまで企業に媚を売るのか、というお叱りもあると思いますが、どうしても、その企業で自分の能力を活かして頑張ってみたいという強い想いがあるのであれば、採用されるためにできることは全て試すべきであると僕は考えます。
逆に「自分は見た目ではなく、能力を正当に評価してくれる企業で頑張りたい」と、考える人は自分の信じる信念に沿った行動ができれば、それは素晴らしいことだと思います。

就職活動において何が正解で、何が不正解であるかなんてことは自分自身が決めればいいことです。 ただ何を選ぶにせよ、自分ができることを全てやりきったのか、それともここまででいいやと妥協したのか、それは将来に、自分の人生を振り返った時に分かるものだと思います。

ただ面接官はハロー効果という人間心理の認知バイアスの影響を受けることが多いものです。 そのことを理解した上で、自らの就職活動に活かして貰えれば幸いです。