月別アーカイブ: 2014年3月

エントリーシートを受け取った企業では何があっているのか?

新入社員の研修が早いところは始まりました。緊張した初々しい姿を見ていると、まずは素直な気持ちで頑張ってほしいと思います。

そんな初々しい新入社員が通ってきた就職活動の道ですが、やはり質問を多く受けるのが、エントリーシートをどのように書けばいいのか?ということです。 本日は、そんなエントリーシートを書く前に、まずは覚えておいてほしいことについて書いてみたいと思います。

16e5b72f7edffa0c09c5998a0fc17440_m

エントリーシートを出したあと?

エントリーシートの書き方について、ネットを検索すれば、それこそ何十万件がヒットします、そんな中で僕がマニュアルの話をしても仕方がないと思います。 そこで、エントリーシートを出すにあたって覚えておいてほしい、エントリーシートを受け取った大手企業のことを書いてみます。

これは大事なことで、書き方のマニュアルがあっても書いた後にどうなるか?を述べているサイトはほとんどありません。 目的はあくまでも、次の面接等のステップに繋がるためのエントリーシートであって、提出することが目的ではないはずです。

大手企業内で、どのようにエントリーシートを取り扱っているのかを理解しておけば、自分自身が書くエントリーシートの方向性を考える際の一助になると思いました。

企業は読んでいない

大手の企業になると、エントリーシートは数千通以上が当たり前のように届きます。そんな膨大な数が来ると、採用担当者としては、ひとりひとりジックリ読んであげたいと思いつつも、現実にはそんな時間や人数の余裕はありません。ひとりあたり数秒から数十秒ってところです。
人事担当者もひとりの社員で、他にもいろいろ仕事を抱えてます。そして、この時点で目を通すのは人事部長など管理職ではなく、多くの場合は社歴も浅い社員の方です。

いち人事担当者の立場からすれば、へんな冒険をした選考はできません。 上司からなぜこの人物についての選考をすすめるのか、尋ねられた時に明確に答えれないと、ダメ出しされます。見も知らぬ誰かの為に、わざわざ自らリスクを負う社員はいないと考えましょう。 時々、奇をてらったエントリーシートで成功した!みたいな話を聞きますが、正直に言えば、特異な例で普通は足切りに合うだけです。

そして、提出されるエントリーシートは、ほとんど書いてあることは、どこかで見たことがあります。 みんながマニュアルを見て書くので、似たり寄ったりになるのは当たり前。サークルでリーダーを頑張りました、ボランティアしました、御社の製品に魅力を感じます、そんなありきたりの内容で、判断しなければいけない担当者の苦労は大変なものです。

そうなると、結局、明確に判断できる材料である、学歴で足切りをせざるを得なかったりします。 (企業によっては、どこ大学から何名採用するという決まりを持っているところもあったりします。)

有名大学以外は採用されないのか?

ここで僕が言いたいことは、有名な大学以外は採用されないから諦めなさいということではなく、現実を把握した上で、受け取るであろう人事担当者が、どうすれば興味をもってすすめてくれるのか、マニュアルを頼るのではなく、自分の頭で考え悔いなきようにエントリーシートを書いてほしいということです。 提出しないとチャンスも巡ってきません。バッターボックスに立ってバットを振らなきゃ野球は始まりません、それと同じです。

自らの頭で考えて、自らの言葉でエントリーシートを書くこと、変に着飾った言葉が並ぶより不思議と目につき良い結果を招いてくれると思います。 それがエントリーシートを書く前に、僕が知っておいてほしいことです。

 

農薬混入事件から学ぶ:まとめ

アクリフーズの農薬混入事件について3回にわたって書いてきましたが、今回は、全体をまとめるとともに、国内の食品メーカーが置かれている状況も含めて記事を書きます。

abc049894ef7695333e2b0e9e3b11276_m

高まる安全基準が人件費を削減させる

食品メーカーの製品に対して、安全性を求める動きは年々厳しくハードルは高くなっています。傍から見ていても、果たしてそこまでしなければいけないのか、そこを厳しくすることで、どれほどの改善が期待できるのか疑問に思うこともしばしばです。 工場内のあらゆる場所にある毛髪混入防止の粘着ローラー (先日伺った企業では会議室にもあり、僕もローラーがけをするべきか迷いました) 箸の上げ下げまで規定するのではと思わせる細かく規定されたルール。確かに安全性を担保するためには、必要な取り組みではありますが、このような取り組みが無料で出来るわけではありません。取り組む為にはそれだけの経費・時間が必要になります。

しかし、このような取り組みに必要な経費が増大していても、商品価格に上乗せすることは消費者の反発や売上減少を恐れ、多くの企業は社内の経費削減で対応しています。

また、安全に関する経費の増大だけに留まらず、安全な原材料の調達コスト、高止まりする原油価格はパッケージ等の原材料費を高騰させ、販売の現場では価格競争と、食品メーカーの苦悩は例を挙げると枚挙にいとまがありません。

安全性と経費削減を両立させるために、社員が製品に触れる箇所を少なくする、機械化による効率化もありますが、僕が見ている限り、機械化も行き着くところまできている印象です。これ以上の大幅な効率アップはあまり期待できません。そのような状況の中で経費を削減できる大きな要素は、どうしても”人件費”になってしまいます。

 多大なクレームが反応を鈍くさせる

今回の事件で当初クレームが入った時点で、なぜ企業はすぐに対応を取らなかったのか、疑問を抱く方も多いかもしれませんが、実は食品メーカーには日常的に多くのクレームが入っています。今回の件も当初は多くのクレームのひとつではなかったかと思います。例えばクレーム件数として多い毛髪混入、他にも匂いがおかしい、変な味がした、食べて気持ちが悪くなった等などです。

確かに、企業の責に帰するクレームもあるのですが、一部については企業のせいにするのは、おかしいのではないか、と思わせる内容もあります。

そのようなクレームの中で、僕がメーカーで聞いて驚かされた例は、冷凍食品のパッケージを開け常温の部屋に半日おいていた後、レンジで温めたら変な味がした、というものがありました。このようなクレームであっても、企業としては『あなたが悪いんです』と結局言えなかったという話を聞きました。

何かあればすぐに救急車を呼ぶ、モンスター・ペイシェントの話題が、時々メディアで取り上げられます。このことが、本当に必要な人の元に救急車が駆けつけれない状況を引き起こす、との切り口で紹介されますが、食品メーカーのクレームについても同じことが言えると思います。
食品メーカーで品質管理をする方も、働くひとりの人間です。毎日のように似たり寄ったりのクレームを処理していると、何が早急な対応が必要で、何が後回しでも大丈夫なのか、判断が鈍ってしまい、本当に優先させるべき事象への対応が遅れる結果にもなります。もちろん大小クレームの対応にも経費がかかっています。

問題があった際にクレームとして、メーカーに改善を促すことは企業側の立場からしても、ぜひ伝えてほしいことです。なぜならサイレントクレームという形で、二度とその商品を買わない。ということになると、企業にとっては改善するチャンスを失い、いつまで経っても改善が進まないという状況を招きつつ、消費者が離れていくという結果になります。

あくまで今回のアクリフーズの対応に問題がないと言っているわけではなく、アクリフーズも含めたた食品メーカーの置かれている現状を少しでも理解してもらい、消費者としてはクレームを出す前に、そのクレームが適当か否かを判断することが、まわりまわって自らが手にする食品の安全性にも繋がってくるのではないかと僕は考えます。

これを改善するには、ホームページにクレームについてのFAQを分かりやすく設けることもひとつのアイデアだと考えます。例えば毛髪混入を見つけたらどうしたらよいのか、異臭を感じた際にはどうすればいいのか、大部分のクレームはいくつかのパターンに集約できますのでホームページで拾いきれない異例な事象を企業側としては見極めやすくなります。いまの世の中、異物混入はありえません。と言い張るより、万が一問題があれば企業として真摯に対応させてもらう姿勢を打ち出す方が、信頼を得るでしょう。

食品メーカーは3つのバランスが大切

最後に前3回の記事で書いた、フードディフェンス・給与と不満・情報開示について、食品メーカーに取り組んでほしいことは、ハードとしてのフードディフェンスだけでは100%の管理はできないことを理解した上で抑止効果を考えて仕組み化し、給与面だけで人を縛ることができると考えるのではなく、社員が働きやすい環境やモチベーションを高めると仕組みづくりを同時に行っていきます。これがソフト面の対応です。その上で、万が一の危機が想定外では済まないことを理解して、クライシス・マネジメントとしての準備をしておくことです。

この3つの仕組みを、どのようにバランスをとり運営していくかを考えることが、大切なことになります。もし自社で同様の事件が発生しても、問題なく対応できる備えがある企業にとっては、今一度見直しのタイミングとして、逆に倒産の危機に陥ることが想定される企業にとっては、仕組みを作るよい機会として今回の事件を活かし、二度と同様の事件を起こさない体制を各食品メーカーがとることが求められると思います。

ついでに言えば、このような事件の後ですので、来期に向けて社内での予算も取りやすいと思われます。

 

農薬混入事件から学ぶ:情報開示

アクリフーズの農薬混入事件から考える人事、第3回目は情報開示の方法について書いてみたいと思います。

人事ではなく広報の業務ではないかという内容ですが、情報開示をうまく行わないと、今回のような事件の際に社員の生活を守れないばかりか、多大な影響を与える結果になりますので、舵取りをする管理職の方は理解しておく必要があります。

78f08479f15d727afdd8a6e4a4bf67a8_m

情報開示が会社を危機に陥れる

今回の、問題発覚以降、アクリフーズの記者発表や情報発信を見ている限り、改善できる課題が見受けられます。また食品偽装や異物混入事件が発生する度に繰り返される、情報開示の遅れや発信の方法があまりにも稚拙すぎるため、企業はよりダメージを受ける結果を自ら招いています。

これは食品という消費者の口に直接入る身近な商品であるからこそ、一旦発覚すると、消費者にとっては自分自身の身近な問題として、意識に落とし込まれるということを、食品に関わる仕事の方は理解しておく必要があります。このことと逆のプラス意識への働きかけが、メディア等で納豆やトマトジュースが健康に良いと紹介されると、スーパーの売り場から商品が消えてしまうことは、物事の表と裏です。

それだけ消費者にとって身近なモノを作るメーカーにとって、自社製品の価値が著しく毀損される問題は、数ある事例(2000年の雪印集団食中毒事件など)からも明白なように、会社の存続すら危ぶまれる状況を引き起こします。つまり一般的な損得を考えるリスクマネジメント程度の意識では甘く、対応を一歩誤れば会社が消えてなくなるクライシス(危機)マネジメントであると理解しておかなければいけません。

ナポレオンの方法を参考に情報を開示する

このような企業の将来を左右する事態になった際に、まず大切なことは、情報をどのように早く適切に社会に出すかということです。情報のスピードが早く多様になった現代社会で、問題を表面化させることなく、内部で処理できるとは決して考えてはいけません。”いま何が起こっているのか”という情報を随時に素早く、発信していくことが大切なのです。

ナポレオンは部下に『悪い報告を先にせよ!良い報告は明日でもよい』と言っています。この話をナポレオンを消費者や社会、部下を食品メーカーに置き換えると分かりやすいでしょう。異物混入などの消費者にとって悪い情報は、詳細が判明する前に、まずは速やかに発信すことです。あとで事実が確定した際に、最初の発表よりも事態が好転していれば、事態は収束に向かうことが出来ます。

今回の事件では、最悪の結果は変わりませんが、例えば、商品から異臭がするとクレームが入り、工場で使われたペンキが疑われた時点で、まずはホームページでも構わないので発表をするべきでした。そうすれば、発表が遅いという責を回避することはできました。

スーパーで、お客様の声としてお叱りなどを掲示していますが、あれはよい取り組みです。自らにとってマイナスである情報もオープンにする姿勢が、逆に信頼を得ることに繋がっています。(スーパーに行き観察していると、多くの方が、あのお叱りを見ていることが実際に理解できるでしょう。)

状況の確認や社内の都合を優先させ、結果として最悪の事態になってしまうと、時間だけが無駄に経過しています。その間にも物事は進んでいますので事件の隠蔽を疑われ、より社会や消費者は怒りを持つのです。いくら詳細が判明してから発表するつもりでしたと言い訳したところで後の祭りにしかなりません。

今回は、11月中旬にクレームが入り、記者発表になったのが年末と1ヶ月半の期間が空いてしまいました。アクリフーズの立場になって考えれば、今回の事件の様に、何が原因か検討もつかぬまま分析を開始したのであれば、ある程度、時間がかかることは仕方ありません。テレビのように、分析したら原因がすぐに判明することは現実にはありません。
またOEM生産もあり、利害関係者への根回しに時間がかかったというのも、仕方がないのでしょう。しかし、分析に時間がかかり利害関係者が多いからこそ、早く情報発信をしないと、より相手先に迷惑をかけ、問題を更に大きくする原因にもなるのです。

また責任を少しでも回避したいとの思惑が『異物を現場に持ち込むことは出来ない』『容疑者の給与についての不満は確認できていない』と言い訳に聞こえてしまう発表をしてしまいます。このような場合には『会社は全責任を持つ』『あらゆる可能性を排除しない』『犯罪であれば絶対に許さない』『情報は常にオープンにする』という点を、全面に出すほうが結果としては好印象を受けることが多いものです。

以上、今回の件から学ぶことができることは”いま何が起こっているのか、悪い情報ほど、早くオープンにしてしまう”ということです。会社が危機に陥った時に、回避できるのか否かTOPの情報発信によって変わります。このことを考えておきたいものです。